サーマルリサイクルとは?仕組みや具体例、メリット・デメリットを解説

サーマルリサイクルとは?仕組みや具体例、メリット・デメリットを解説 環境用語

サーマルリサイクルとは、廃棄物を燃やしたときに発生する熱を回収し、発電や温水供給などに活用する方法です。
熱を利用せずに処分する単純焼却とは異なり、廃棄物が持つエネルギーを回収する点に特徴があります。

材料として再生しにくい廃プラスチックなども活用できる一方、CO2の排出や資源が材料として循環しない課題もあります。

本記事では、具体的な仕組み、他のリサイクル方法との違い、メリットと課題、日本とEUなどで位置づけが異なる背景、処理方法を選ぶ際の確認点を解説します。

  1. サーマルリサイクルとは?仕組みが分かる3つのポイント
    1. 焼却時の熱を回収する点で単純焼却と異なる
    2. 余熱利用や廃棄物発電で熱と電気をつくる
    3. RDFやRPFに加工して固形燃料として活用する
  2. マテリアル・ケミカルとの違いを理解する2つの視点
    1. 処理後に材料・原料・エネルギーの何を得るか
    2. 廃棄物の汚れや混合状態によって適した方法が異なる
  3. サーマルリサイクルの3つのメリット
    1. 材料として再生しにくい可燃性廃棄物を活用できる
    2. 回収した熱や電気で化石燃料由来のエネルギーを一部代替できる
    3. 廃棄物の容積を減らして最終処分場の負担を抑えられる
  4. サーマルリサイクルが抱える3つの課題
    1. CO2を排出し、燃やした資源を材料として再利用できない
    2. 設備や熱の利用先によってエネルギー効率が変わる
    3. 排ガスと焼却灰を適切に管理する必要がある
  5. 日本とEUなどで位置づけが異なる2つの背景
    1. 日本ではプラスチックの有効利用方法として普及している
    2. EUなどではリサイクルとエネルギー回収を区別している
  6. サーマルリサイクルを選ぶ前に確認する3つのポイント
    1. 発生抑制や再使用によって廃棄物を減らせないか
    2. 材料や原料として再生できる状態か
    3. 回収した熱や電気を効率よく利用できるか
  7. サーマルリサイクルは資源循環を補う選択肢

サーマルリサイクルとは?仕組みが分かる3つのポイント

焼却時の熱を回収する点で単純焼却と異なる

経済産業省は、ごみの焼却時に出る熱を回収し、施設内外でエネルギーとして活用する取組をサーマルリサイクルと説明しています。

単純焼却も廃棄物を燃やす工程は同じですが、熱を利用せず、廃棄物の減量や衛生的な処理を主な目的とする点が異なります。

処理方法を確認するときは焼却設備の有無だけで判断せず、熱の回収量や利用先まで把握すると、単純焼却とサーマルリサイクルを区別できます。

余熱利用や廃棄物発電で熱と電気をつくる

余熱利用では、焼却炉から回収した熱を温水や蒸気に変え、処理施設の給湯・暖房や近隣施設への熱供給に使います。
環境省は具体例として、施設内外への温水・蒸気の供給を挙げています。

廃棄物発電では、高温の排ガスが持つ熱をボイラーで回収して蒸気を発生させ、その蒸気でタービンを回して発電します。

つくった電気は処理施設内で使用でき、余った分を周辺施設へ供給するなど、回収したエネルギーを複数の形で活用できます。

RDFやRPFに加工して固形燃料として活用する

国立環境研究所によると、RDFとRPFは、廃棄物を破砕・選別して一定の形に固めた燃料を指します。
RDFは生ごみを含む可燃性の一般廃棄物を主原料とし、水分を取り除いたうえで圧縮成形します。

RPFは、主に産業廃棄物として分別された古紙と廃プラスチックを原料にするため、RDFより組成や発熱量を調整しやすい燃料です。

製造した固形燃料は専用のボイラーなどで燃やし、工場の熱源や発電用燃料として利用されます。

マテリアル・ケミカルとの違いを理解する2つの視点

処理後に材料・原料・エネルギーの何を得るか

3つのリサイクル方法は、廃棄物を処理した後に何を取り出し、どのような用途へつなげるかで区別できます。
資源エネルギー庁の説明を基に違いをまとめると、以下のとおりです。

方法処理後に得るもの主な利用方法
マテリアルリサイクル再生材料プラスチック製品などの材料
ケミカルリサイクル化学原料化学製品や燃料などの原料
サーマルリサイクル熱エネルギー熱供給や発電

マテリアルとケミカルは廃棄物を材料や原料へ変えるのに対し、サーマルは廃棄物が持つ熱量をエネルギーとして利用します。

廃棄物の汚れや混合状態によって適した方法が異なる

環境省によると、マテリアルリサイクルでは、回収した廃プラスチックに異物除去、選別、洗浄などの処理を行います。

同じ種類に分けられ、汚れや異物が少ない廃棄物ほど、品質の安定した再生材料へ加工しやすくなります。

複数の素材が貼り合わされた製品や汚れの除去が難しい廃棄物は、材料としての再生効率や品質が下がります。

このような廃棄物は、各施設の技術や受入条件に応じてケミカルリサイクルや熱回収を検討し、材質と混入物を処理業者へ伝えてください。

サーマルリサイクルの3つのメリット

材料として再生しにくい可燃性廃棄物を活用できる

サーマルリサイクルは、複数素材が混ざった製品や汚れが残る廃プラスチックなど、材料への再生が難しい可燃性廃棄物にも対応できます。

具体例として、紙とプラスチックを貼り合わせた包装材や、選別工程で取り除かれた可燃性の残さが挙げられます。

これらを単純焼却や埋め立てに回さず、燃焼時の熱を回収すれば、廃棄物が持つエネルギーを処理と同時に利用できます。

ただし、不燃物や有害物質を含む廃棄物まで一律に扱えるわけではないため、処理施設が定める品目や成分の基準に従ってください。

回収した熱や電気で化石燃料由来のエネルギーを一部代替できる

環境省は、廃棄物エネルギーを発電などに活用することで、化石燃料の使用量削減につながると示しています。

廃棄物発電でつくった電気を施設内で使えば購入電力を減らせるほか、蒸気や温水はボイラー燃料の使用を補えます。

また、古紙や廃プラスチックからつくるRPFは、製紙工場やセメント工場などで石炭などを一部置き換える燃料として活用されます。

代替できる量は廃棄物の発熱量や設備の性能、回収したエネルギーの利用量によって変わるため、使用実績を基に評価してください。

廃棄物の容積を減らして最終処分場の負担を抑えられる

可燃性廃棄物を焼却すると、水分が蒸発して有機物が燃焼し、処理後に残るものは焼却灰や不燃物が中心となります。

廃棄物をそのまま埋め立てる場合より最終処分量を減らせるため、処分場の限られた埋立容量を長く使えます。

ただし、減容は焼却工程による効果であり、サーマルリサイクルだけに備わる特徴ではありません。
サーマルリサイクルは、廃棄物を減容する工程に熱や電気の回収を組み合わせ、処理時に生じるエネルギーも利用する方法です。

サーマルリサイクルが抱える3つの課題

CO2を排出し、燃やした資源を材料として再利用できない

石油由来の廃プラスチックには化石由来の炭素が含まれるため、熱や電気を回収しても、燃焼時にはCO2が発生します。
環境省も、廃棄物の燃料利用や熱回収を伴う焼却について、CO2排出量の算定方法を示しています。

また、一度燃やしたプラスチックは材料として残らないため、同じ資源を製品へ繰り返し戻すことはできません。
回収したエネルギーは利用できますが、資源循環の面では、材料や原料として再生する方法と役割が異なります。

設備や熱の利用先によってエネルギー効率が変わる

廃棄物から回収できるエネルギー量は、焼却炉や発電設備の規模、廃棄物の発熱量、蒸気タービンの性能によって変わります。

同じ量の廃棄物を処理しても、設備の運転方式や発電後の余熱利用によって、外部へ供給できる電気や熱に差が生じます。

環境省は、十分に活用されていない焼却熱を、蓄熱輸送によって需要先へ届ける実証事業を進めています。
施設を評価する際は、発生した熱量だけでなく、回収量と実際に使用・供給したエネルギー量を確認してください。

排ガスと焼却灰を適切に管理する必要がある

廃棄物の燃焼時には、ばいじんや酸性ガスが発生し、燃焼状態によってはダイオキシン類が生成される場合があります。
環境省は、焼却施設に燃焼温度の管理、排ガスの冷却、濃度の測定・記録などの基準を設けています。

また、焼却後に残る主灰や集じん設備で回収する飛灰には、重金属などが含まれる場合があるため、性状に応じて処理します。

熱や電気を回収しても環境管理は省略できないため、排ガスの測定結果と焼却灰の処理先を確認してください。

日本とEUなどで位置づけが異なる2つの背景

日本ではプラスチックの有効利用方法として普及している

日本では、廃プラスチックから熱や電気を回収する方法をサーマルリサイクルと呼び、材料・原料への再生とともに有効利用へ含めています。
利用方法は、ごみ焼却施設での発電や熱供給、セメント工場での燃料利用、RDF・RPFへの加工などです。

プラスチック循環利用協会によると、2024年の廃プラスチック有効利用率は89%で、サーマルリサイクルが67%を占めました。
ただし、この数値は熱回収を含む「有効利用率」であり、海外のリサイクル率と同じ基準ではありません。

EUなどではリサイクルとエネルギー回収を区別している

EUの廃棄物枠組み指令では、廃棄物処理を発生抑制、再使用の準備、リサイクル、その他の回収、処分の順に位置づけています。

廃棄物を燃料として使うエネルギー回収は「その他の回収」に含まれ、材料や物質を再生するリサイクルとは別の区分です。

そのため、日本でサーマルリサイクルと呼ばれる処理量を、EUのリサイクル率へそのまま加えることはできません。

国や地域の数値を比べる際は、「リサイクル率」と「エネルギー回収を含む有効利用率」のどちらを示しているか確認してください。

サーマルリサイクルを選ぶ前に確認する3つのポイント

発生抑制や再使用によって廃棄物を減らせないか

循環型社会形成推進基本法では、発生抑制、再使用、再生利用、熱回収、適正処分の順に廃棄物処理の優先順位を定めています。

サーマルリサイクルを検討する前に、使い捨て品や過剰包装、製造工程で生じる端材を減らせるか確認してください。

まだ使える製品や部品は、修理、洗浄、詰め替え、返却式容器の導入などによって、廃棄せずに再使用できます。

廃棄物そのものを発生させなければ、焼却時のCO2だけでなく、回収、運搬、処理に使うエネルギーも削減できます。

材料や原料として再生できる状態か

材料や原料への再生可否を判断する際は、廃棄物の材質、複合素材の有無、付着物、水分、異物の種類を確認します。

製品表示や製造工程の記録から材質を特定し、種類ごとに分けられる廃棄物は、混合せずに保管してください。

処理業者には、受け入れられる材質や汚れの程度、必要な量、再生後の用途まで確認すると、実際に再資源化できるか判断できます。

選別や洗浄によって品質基準を満たすものは材料・原料化へ回し、工程後に残る可燃性の残さについて熱回収を検討します。

回収した熱や電気を効率よく利用できるか

委託先を確認するときは、設備の有無だけでなく、年間の発電量、自家消費量、売電量、熱供給量、供給先を確認します。

設備の最大能力ではなく、処理した廃棄物量に対して実際に回収・利用したエネルギー量を比べてください。

環境省は、一定の基準に適合する施設を都道府県知事等が認定する「廃棄物熱回収施設設置者認定制度」を設けています。

認定の有無に加えて熱回収率や利用実績を処理業者へ確認すると、焼却熱が有効に使われているか判断できます。

サーマルリサイクルは資源循環を補う選択肢

  • 焼却時の熱を、温水・蒸気・電気・固形燃料として活用する方法
  • 材料として再生しにくい可燃性廃棄物にも対応可能
  • CO2排出、資源の一回利用、エネルギー効率などが課題
  • 日本では有効利用に含まれる一方、EUではリサイクルと別区分

サーマルリサイクルは、発生抑制、再使用、材料・原料化を検討した後に残る可燃性廃棄物を、エネルギーとして生かす処理方法です。
処理方法を選ぶ際は廃棄物の材質や汚れを確認し、委託先の熱回収率、発電量、熱の供給先まで確かめてください。

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