グリーンカーボンとは?仕組みやブルーカーボンとの違い、活用方法を解説

グリーンカーボンとは?仕組みやブルーカーボンとの違い、活用方法を解説 環境用語

グリーンカーボンとは、森林や草原などの陸上生態系が大気中のCO₂を取り込み、植物体や土壌に蓄えた炭素です。
植物は光合成でCO₂を吸収し、炭素を幹・枝・根などに固定するため、森林は地球温暖化対策を支える吸収源となります。

一方、森林破壊や火災が起これば、蓄積した炭素が大気へ戻るため、植林だけでなく既存森林の保全と継続的な管理が欠かせません。
本記事では、グリーンカーボンの仕組み、ブルーカーボンとの違い、効果や課題、国内で進む活用策を順番に解説します。

  1. グリーンカーボンとは?押さえておきたい2つの基本
    1. 森林などの陸上生態系が吸収・貯留する炭素を指す
    2. 主な対象には森林・草原・農地などの陸上生態系がある
  2. CO₂がグリーンカーボンとして蓄えられる3つの段階
    1. 植物が光合成によって大気中のCO₂を取り込む
    2. 取り込まれた炭素が幹・枝・葉・根に蓄えられる
    3. 落ち葉や枯れた根を通じて炭素の一部が土壌に残る
  3. グリーンカーボンとブルーカーボンを分ける3つの違い
    1. CO₂を取り込む場所が陸上と海洋で異なる
    2. 炭素の主な貯留先が陸上の植物・土壌と海洋生態系・海底で異なる
    3. 炭素が長く残る条件と貯留期間が異なる
  4. グリーンカーボンがもたらす3つの価値
    1. CO₂の吸収源としてカーボンニュートラルを支える
    2. 生物多様性の保全や水源・土壌の保護につながる
  5. グリーンカーボンを活用するうえでの5つの課題
    1. 森林破壊や土地利用の変化によって吸収源が減少する
    2. 火災・枯死・不適切な伐採によって炭素が再放出される
    3. 森林の整備に必要な人材と費用を継続的に確保する必要がある
    4. CO₂吸収量の算定には不確実性が伴う
    5. 吸収できる量には限界があり排出削減の代わりにはならない
  6. 国内で進む3つのグリーンカーボン活用策
    1. 森林の保全・間伐・再造林によって吸収源を維持する
    2. 建築物などへの木材利用によって炭素を長く蓄える
    3. 森林由来のJ-クレジットで森林整備へ資金を循環させる
  7. まとめ|グリーンカーボンで押さえておきたい3つの要点
  8. グリーンカーボンに関するよくある3つの質問
    1. 都市の公園や街路樹もグリーンカーボンに含まれますか?
    2. 個人でもグリーンカーボンの保全に貢献できますか?
    3. グリーンカーボンとブルーカーボンはどちらを優先すべきですか?

グリーンカーボンとは?押さえておきたい2つの基本

森林などの陸上生態系が吸収・貯留する炭素を指す

国立環境研究所によると、グリーンカーボンとは、森林などの陸域生態系が大気中から取り込み、植物体や土壌に蓄えた炭素です。
植物は光合成を通じてCO₂から炭素を取り込み、幹・枝・葉・根などをつくる有機物として一定期間保持しながら成長します。

CO₂は炭素と酸素からなる物質であり、植物や土壌に蓄積される対象を正確に表す場合は「炭素」と区別して記載します。
したがって、グリーンカーボンは森林そのものの名称ではなく、陸上生態系が吸収して内部や土壌に保持する炭素を表す言葉です。

主な対象には森林・草原・農地などの陸上生態系がある

グリーンカーボンの中心となるのは森林ですが、草原や農地も植物と土壌を通じて炭素を蓄える陸上生態系として扱われます。
森林では、樹木の幹・枝・葉・根に加え、枯れ木や落ち葉、土壌にも炭素が蓄積され、複数の貯留先を形成しています。

農地や草地では、作物や牧草の根、収穫後の残さ、堆肥などに由来する有機物が、土壌へ炭素を供給します。
農林水産省も、堆肥や緑肥、バイオ炭の施用によって、農地・草地土壌の炭素貯留を促進する方針を示しています。

CO₂がグリーンカーボンとして蓄えられる3つの段階

植物が光合成によって大気中のCO₂を取り込む

植物が大気中のCO₂を取り込む入口となる働きが光合成であり、葉の気孔から吸収したCO₂を光エネルギーで変換します。
光合成では、根から吸い上げた水とCO₂を材料に糖などの有機物をつくり、その過程で生じた酸素を大気中へ放出します。

林野庁は、樹木が光合成によってCO₂を吸収し、炭素として蓄えながら成長する仕組みを示しています。
この働きによって、大気中に気体として存在していたCO₂の炭素が植物体へ移り、グリーンカーボンの蓄積が始まります。

取り込まれた炭素が幹・枝・葉・根に蓄えられる

光合成でつくられた糖などの有機物は、植物が成長するための材料となり、炭素は幹・枝・葉・根を構成する物質へ移ります。
樹木では、幹や太い根などが長期間残るため、成長によって植物体の量が増えるほど、内部に蓄えられる炭素も増加します。

林野庁の試算では、適切に手入れされた36~40年生のスギ人工林1ヘクタールに、約83トンの炭素が蓄えられています。
CO₂換算では約304トンに相当しますが、これは1年間の吸収量ではなく、森林が成長過程で蓄積してきた量です。

落ち葉や枯れた根を通じて炭素の一部が土壌に残る

落ち葉や枯れた枝・根に含まれる炭素の一部は、地表や土壌中へ供給され、分解を経て土の中の有機物として残ります。
微生物が有機物を分解すると一部はCO₂として大気へ戻りますが、残りはほかの物質と結び付き、土壌中に蓄積されます。

環境省の森林吸収量の算定資料でも、生体バイオマス、枯死木、落ち葉などの堆積物、土壌を炭素の貯留先として扱っています。
グリーンカーボンは目に見える樹木だけに蓄えられるのではなく、森林の地表や地下にも広がっている炭素です。

グリーンカーボンとブルーカーボンを分ける3つの違い

CO₂を取り込む場所が陸上と海洋で異なる

最も分かりやすい違いは、炭素を取り込む生態系がある場所であり、グリーンカーボンは陸上、ブルーカーボンは沿岸・海洋に分布します。
森林や草原などでは陸上植物が大気中のCO₂を取り込み、藻場などでは海草・海藻が海水中のCO₂を光合成に利用します。

環境省は、藻場、塩性湿地・干潟、マングローブ林を、ブルーカーボンの主な吸収源となる生態系に挙げています。
どちらも生物による炭素の取り込みを起点としますが、吸収・貯留を担う生態系の場所によって名称が分かれます。

炭素の主な貯留先が陸上の植物・土壌と海洋生態系・海底で異なる

グリーンカーボンは、陸上植物の幹・枝・葉・根などに保持されるほか、落ち葉や枯れた根を通じて土壌にも蓄積されます。
一方、ブルーカーボンは海草・海藻などの植物体に取り込まれた後、枯れた植物体や細片が海底へ沈み、底泥にも蓄えられます。

国土交通省は、海底への堆積・埋没に加え、外洋の中深層や海水中にも有機炭素が長期間残る経路を示しています。
両者とも生物体と周辺環境へ炭素を蓄えますが、陸上では植物と土壌、海洋では海底や海水まで貯留先が広がります。

炭素が長く残る条件と貯留期間が異なる

炭素が残る期間は名称だけで決まるのではなく、酸素の量、微生物による分解、火災や土地改変など、貯留環境の条件に左右されます。
陸上の植物や土壌に蓄えられた炭素は森林が維持されている間は保持されますが、枯死・分解・火災などによって大気へ戻ります。

沿岸湿地では、植物由来の炭素が水分の多い土壌や堆積物へ埋まり、酸素が少ない環境で分解が遅くなると、長期貯留につながります。
米国海洋大気庁(NOAA)は沿岸生態系に数百年から数千年かけて蓄積した炭素が存在すると説明しており、すべての海域で一律に長く残るわけではありません。

グリーンカーボンがもたらす3つの価値

CO₂の吸収源としてカーボンニュートラルを支える

カーボンニュートラルは、温室効果ガスの排出量から森林などによる吸収量を差し引き、全体として実質ゼロにする考え方です。
グリーンカーボンは、大気中のCO₂を植物へ取り込み、植物体や土壌へ移す自然由来の吸収源として、この均衡を支えます。

環境省によると、2024年度に森林などの吸収源対策で吸収された温室効果ガスは、CO₂換算で約5,230万トンでした。
森林などが吸収した量を国の温室効果ガス収支へ反映することで、削減後も残る排出量の一部を吸収量で補えます。

生物多様性の保全や水源・土壌の保護につながる

グリーンカーボンを蓄える森林を保全すると、CO₂の吸収だけでなく、動植物の生息・生育場所や健全な土壌も維持できます。
樹木や下層植生が地表を覆い、根を広げることで、雨による表土の流出を抑えながら、雨水を地中へ浸透させます。

林野庁は、森林が持つ機能として、生物多様性の保全、土砂災害の防止、水源のかん養などを挙げています。
ただし、炭素の蓄積量が多ければ生物多様性も高まるとは限らないため、地域の生態系に合った樹種や管理方法を選んでください。

グリーンカーボンを活用するうえでの5つの課題

森林破壊や土地利用の変化によって吸収源が減少する

森林が農地や市街地へ転用されると、樹木や土壌に蓄えられていた炭素が失われるだけでなく、その土地が将来吸収するはずだったCO₂も減少します。
新たに植林しても森林の炭素蓄積量が回復するまでには時間がかかるため、既存森林の消失を防ぐ対策が先になります。

国連食糧農業機関(FAO)は、2015~2025年の世界の森林減少を年平均1,090万ヘクタールと推計しています。
伐採後に再造林して森林を維持する施業と、森林を別用途へ恒久的に転用する森林減少を区別して評価してください。

火災・枯死・不適切な伐採によって炭素が再放出される

森林火災が起きると、燃えた植物体の炭素はCO₂として放出され、火災後に枯れた樹木の炭素も分解の進行に伴って大気へ戻ります。
病害虫や干ばつによる集団枯死でも、森林のCO₂吸収量が低下する一方、増加した枯死木から分解による放出が続きます。

森林総合研究所の調査では、火災で枯死した大木の一部が14年後も残っており、炭素は火災直後にすべて放出されるわけではありません。
伐採後に再造林しない場合や土壌を大きく損なう施業では炭素量が回復しにくいため、伐採・木材利用・再造林を一体で評価してください。

森林の整備に必要な人材と費用を継続的に確保する必要がある

森林整備は植林で終わらず、下刈り、除伐、間伐、作業道の維持、吸収量の調査などを、森林の成長に合わせて長期間続けます。
木材を販売できるまで収入が得にくい一方、植栽や保育の費用は早い段階から発生するため、資金不足で管理が止まるおそれがあります。

林野庁によると、国内の林業従事者は2020年時点で4万4,000人であり、65歳以上が占める割合は25%でした。
長期の森林管理を前提に、作業を担う人材の育成、労働環境の改善、木材収入以外の財源を組み合わせてください。

CO₂吸収量の算定には不確実性が伴う

森林のCO₂吸収量は、すべての樹木を直接測定して求めるのではなく、森林面積、樹種、林齢、幹の体積などのデータから推計します。
樹木の成長や枯死は気候、土壌、災害、管理方法によって変わるため、使用するデータや計算式によって算定結果に差が生じます。

林野庁は、高齢の人工林や天然林では成長モデルによる推計に誤差が出やすいとして、全国森林資源調査を使う方法への見直しを進めています。
吸収量を公表する際は、対象面積、算定期間、使用したデータと方法、推計に含まれる不確実性を併せて明示してください。

吸収できる量には限界があり排出削減の代わりにはならない

森林が1年間に吸収できるCO₂量は、森林面積、樹木の成長量、気候などに左右されるため、植林によって際限なく増やせるものではありません。
成熟した森林は多くの炭素を蓄えていますが、成長に伴う年間吸収量は次第に小さくなり、排出量が吸収量を上回れば大気中のCO₂は増加します。

環境省は、カーボンオフセットについて、排出量をできる限り削減したうえで、避けられない排出を吸収・削減活動で補う考え方と説明しています。
企業が活用する際も、自社の排出削減量と森林などによる吸収量を分け、グリーンカーボンは残余排出を補う手段として扱ってください。

国内で進む3つのグリーンカーボン活用策

森林の保全・間伐・再造林によって吸収源を維持する

既存の森林を保全すると、樹木や土壌に蓄えられた炭素を守りながら、成長によるCO₂吸収を継続できます。
人工林では、混み合った木を間伐して残す木の成長を促しますが、吸収量への効果は樹種、林齢、伐採量、木材の利用方法によって変わります。

主伐を行った場所へ再び苗木を植えて育てる再造林は、次の世代の森林を形成し、将来の吸収源を引き継ぐ取り組みです。
林野庁によると、2023年度は人工造林が3万5,000ヘクタール、保育や間伐などの森林施業が44万ヘクタールで実施されました。

建築物などへの木材利用によって炭素を長く蓄える

樹木を伐採すると森林内の炭素は減りますが、木材を建築物や家具として使い続ける間は、樹木が吸収した炭素を製品内に保持できます。
使用後の木材をパーティクルボードなどへ再加工すれば、廃棄や燃焼までの期間を延ばし、炭素をより長く製品内に残せます。

林野庁は、建築物などに使われる国産材の炭素貯蔵量の変化を、伐採木材製品(HWP)として国の吸収量へ計上しています。
木材利用による効果は、合法性と持続可能性を確認した木材を選び、建築物の長寿命化と伐採地の再造林を組み合わせて評価してください。

森林由来のJ-クレジットで森林整備へ資金を循環させる

J-クレジット制度は、省エネルギー設備による排出削減量や、森林管理によるCO₂吸収量を国が認証し、売買できる形にする制度です。
森林所有者や自治体などは、認証されたクレジットを企業へ売却し、その収入を間伐、再造林、調査などの費用へ充てられます。

林野庁は、森林経営活動や植林活動によって増加した炭素蓄積量を、森林分野のJ-クレジットとして認証しています。
森林が吸収した量のすべてを販売できるわけではなく、プロジェクト登録、吸収量の算定、モニタリング、第三者による審査を経て認証されます。

まとめ|グリーンカーボンで押さえておきたい3つの要点

  • グリーンカーボンは、森林などの陸上生態系が吸収し、植物体や土壌へ蓄えた炭素です。
  • CO₂吸収に加え、生物多様性や水源の保全にもつながりますが、排出削減の代わりにはなりません。
  • 森林の保全・再造林・木材利用・J-クレジットを組み合わせると、炭素と資金を循環させられます。

企業が取り組む際は、自社の排出削減を進めたうえで、森林の管理計画、吸収量の算定方法、クレジット収入などの使途を確認してください。
制度や吸収量だけで判断せず、森林が長期的に維持され、地域と生態系へ利益が還元される取り組みを選んでください。

グリーンカーボンに関するよくある3つの質問

都市の公園や街路樹もグリーンカーボンに含まれますか?

広い意味では、公園や街路樹などの都市緑地も、植物がCO₂を吸収して樹木や土壌へ炭素を蓄えるため、グリーンカーボンに含まれます。

環境省も、地方公共団体が温室効果ガス吸収量を算定する対象に、森林、農地、都市緑化を挙げています。
ただし、公園や街路樹の炭素が自動的にクレジットになるわけではなく、制度ごとの算定条件を満たした場合に限って認証対象となります。

個人でもグリーンカーボンの保全に貢献できますか?

個人でも、森林整備や植樹活動への参加、持続可能性に配慮した木材製品の購入、森林保全団体への寄付などを通じて貢献できます。

林野庁によると、森林づくり活動を実施する団体は2021年度時点で3,671団体あり、地域住民やNPOなどが各地で活動しています。

参加先を選ぶ際は、森林の管理方針や資金の使途に加え、整備後の経過や活動実績を継続して公開しているか確認してください。

グリーンカーボンとブルーカーボンはどちらを優先すべきですか?

一律の優先順位はなく、地域の自然環境や保全課題に応じて、森林・農地と藻場・干潟の双方を守る考え方が基本です。

環境省の自然再生基本方針も、森林や草原の適正な管理と、ブルーカーボン生態系の保全・再生・創出を並行して示しています。

CO₂吸収量だけでなく、生物多様性や防災、水源保全、漁場環境など、地域にもたらす効果を比べて取り組みを選んでください。

【参考】
ブルーカーボンとは?仕組みや4つの生態系、メリット・課題を解説
カーボンニュートラルとは?意味や仕組み、必要な理由をわかりやすく解説

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