マイクロプラスチックとは一般に直径5mm未満の微細なプラスチックを指し、海や河川、大気、土壌などの環境中に広く分布しています。
ペットボトルなどが細かく砕けて生じるほか、合成繊維の洗濯やタイヤの摩耗など、日常生活や移動からも継続的に発生します。
海洋生態系への影響が懸念される一方、人体への健康影響には未解明な点が多く、体内で検出された事実だけでは因果関係まで判断できません。
この記事では、種類と発生源、環境・人体への影響、国内外の対策を整理し、日常生活で無理なく続けられる減らし方まで具体的に解説します。
マイクロプラスチックとは?押さえておきたい3つの基礎知識
直径5mm未満の小さなプラスチックを指す
対象となる粒子の形は一様ではなく、砕けた破片、細長い繊維、丸い粒など、発生源となる製品や劣化の仕方によって大きく異なります。
なお、この基準は粒子の大きさの上限を示すもので、調査対象や採取方法、研究分野によって実際に扱う下限値には違いがあります。
素材にはポリエチレンやポリプロピレン、ポリエステルなどがあり、特定の形や一種類の樹脂だけを示す名称ではありません。
発生過程によって一次と二次の2種類に分けられる
一次マイクロプラスチックは、製造時から小さな粒として作られ、製品の原料や添加物として使用・運搬される過程で流出するものです。
一方、大きなプラスチック製品が使用中に摩耗したり、廃棄後に紫外線や波で劣化・破砕されたりして生じる粒子は、二次マイクロプラスチックに分類されます。
ナノプラスチックとは粒子の大きさが異なる
ナノプラスチックは、マイクロプラスチックよりもさらに小さく、一般に1μm(0.001mm)未満とされる微細な粒子の総称です。
粒子が小さくなるほど採取や分析の難度が上がり、環境中にどれほど存在するのかを正確に把握しにくくなります。
さらに、水や空気中での移動の仕方や生物への取り込まれ方も変わるため、研究結果では両者を分けて確認してください。
マイクロプラスチックの4つの主な発生源
プラスチックごみが紫外線や波によって細かく砕かれる
海岸や河川へ流出したペットボトル、袋、食品容器、漁具などは、日光や波、砂との摩擦を受けながら徐々に劣化します。
紫外線で樹脂がもろくなった状態に物理的な力が加わると、表面の亀裂が広がり、次第に細かな破片へ変化します。
合成繊維が洗濯排水を通じて流出する
ポリエステルやナイロン、アクリルなどの合成繊維はプラスチックの一種で、衣類を洗濯すると摩擦によって生地の表面から微細な繊維くずが抜け落ちます。
これらは洗濯排水とともに下水処理施設へ運ばれ、多くが取り除かれますが、処理しきれなかった一部は河川や海へ流出します。
タイヤ摩耗粉が雨水とともに河川や海へ流れ込む
自動車のタイヤは、走行中に接地面が路面との摩擦で少しずつ削れ、ゴムや添加剤などが混ざった微細な摩耗粉を生じます。
道路上にたまった摩耗粉は、降雨時に排水溝から河川や海へ運ばれるほか、大気中へ舞い上がり、道路周辺の土壌にも広がります。
マイクロビーズ・樹脂ペレット・塗料などからも発生する
洗顔料や歯磨き粉のスクラブ剤として使われてきたマイクロビーズは、製品の使用後に排水へ入り、河川や海へ運ばれる場合があります。
プラスチック製品の原料となる樹脂ペレットは、製造工場や輸送中にこぼれると、雨水や排水を通じて環境中へ流出する原因です。
また、船舶や建物、道路標示に使われる塗料の剥離片、人工芝から抜け落ちる樹脂片なども、摩耗や劣化によって生じます。
マイクロプラスチックが引き起こす3つの問題
自然に分解されにくく、広範囲に拡散すると回収が難しい
多くのプラスチックは自然環境で短期間に分解されず、細かくなっても物質そのものが消えるわけではありません。
微細な粒子は水や砂、泥と混ざった状態で広範囲に存在するため、周囲の生物や環境に影響を与えず、粒子だけを選別して回収するのは困難です。
海洋生物が取り込み、生態系へ影響するおそれがある
海中に漂う粒子は、動物プランクトンや貝類、魚類などに餌とともに取り込まれ、野外調査でも消化管から検出されています。
実験研究では、摂食量の低下や成長の遅れ、生殖・免疫機能への影響が示されていますが、粒子の種類や濃度によって結果は異なります。
取り込んだ生物を別の生物が捕食すれば粒子が食物網を移動する一方、個体群や生態系全体へ及ぼす影響の大きさは未解明です。
漁業や観光業、廃棄物処理にも負担を与える
漁業や養殖業では水産物と生息環境の調査、観光地では海水や砂浜の監視など、汚染状況を把握して利用者へ説明する業務が発生します。
ただし、経済的な損失は大型の海洋ごみと合わせて評価される例が多く、マイクロプラスチック単独の影響額は明らかになっていません。
行政や事業者には、プラスチックごみの回収・選別に加え、排水・雨水の処理や流出防止設備を整える費用もかかります。
人体への影響を判断するための3つのポイント
食品・飲料水・空気を通じて体内へ入る可能性がある
魚介類や食塩などの食品、水道水・ボトル入り飲料水、屋内外の空気からマイクロプラスチックが検出されており、人は飲食や呼吸を通じて曝露を受けています。
ただし、食品や空気中から検出された事実だけでは、一人ひとりが日常生活でどの程度取り込んでいるかまでは判断できません。
人体から検出されたという研究報告もある
血液や肺組織からマイクロプラスチックを検出した研究が公表され、飲食や呼吸で取り込まれた粒子の一部が体内へ移行する可能性が示されています。
ただし、対象者数は限られ、分析方法や試料への混入を防ぐ手順も統一されていないため、一般的な検出頻度や体内量は定まっていません。
健康被害との因果関係には未解明な点が残されている
細胞や動物を用いた実験では、マイクロプラスチックへの曝露による炎症や酸化ストレス、免疫機能の変化などが報告されています。
ただし、実験で使われる粒子の大きさや形、材質、曝露量は研究ごとに異なり、結果を日常生活での人体影響へ直接当てはめることはできません。
さらに、人を長期間追跡した研究も十分ではなく、特定の病気との因果関係や健康影響が生じる曝露量は確立されていない段階です。
日本と世界で進められている3つの対策
国際社会ではプラスチックの製造から廃棄までを対象に議論している
2022年3月、国連環境総会は決議5/14を採択し、プラスチック汚染に関する法的拘束力のある国際文書の策定交渉を開始しました。
対象は海洋ごみに限らず、プラスチックの製造、製品設計、使用、回収、再利用、廃棄までのライフサイクル全体です。
2025年8月の会合では条文案への合意に至りませんでしたが、2026年2月に新議長を選出し、同年8月時点でも交渉再開へ向けた調整が続いています。
欧州では製品に意図的に添加されるマイクロプラスチックを規制している
EUでは、化学物質規制「REACH」に基づく規則(EU)2023/2055が2023年10月17日に適用され、意図的に添加される合成ポリマー微粒子の販売規制が始まりました。
対象にはマイクロビーズやプラスチック製ラメなどが含まれますが、化粧品や洗剤の一部には用途別の経過措置が設けられています。
タイヤや合成繊維のように使用中の摩耗で生じる粒子は対象外なので、すべてのマイクロプラスチックを一度に禁止する制度ではありません。
日本では海洋流出の防止とプラスチックの資源循環を進めている
2018年改正の海岸漂着物処理推進法は、使用後に河川や海へ流出する製品について、マイクロプラスチックの使用抑制を事業者の努力義務として定めました。
2022年4月施行のプラスチック資源循環法は、製品設計から販売、回収、再資源化までを対象に、3Rと再生可能資源への切り替えを促しています。
日常生活で無理なく続けられる5つの対策
マイボトルや詰め替え製品で使い捨て容器を減らす
外出時にマイボトルを持参し、洗剤やシャンプーは詰め替え製品を選ぶと、使い捨て容器の使用量を抑え、廃棄後に細片化するプラスチックも減らせます。
専用品を新たにそろえず、手持ちのボトルや容器を長く使い、外出や買い物など習慣にしやすい場面から切り替えてください。
衣類を長く使い、洗濯回数や洗い方を見直す
上着など洗濯頻度を抑えられる衣類は、汚れや汗の状態を確認して洗う間隔を調整し、ほつれや傷みを補修しながら長く使用してください。
洗う際は衣類をネットに入れ、洗濯機のフィルターにたまった糸くずを排水口へ流さず、ごみとして処分すると河川や海への流出を抑えられます。
タイヤの空気圧を保ち、摩耗を抑える運転を心がける
給油や定期点検の際にタイヤの空気圧を確認し、車両ごとの指定値に保つと、偏摩耗や過度なすり減りを防げます。
急発進、急ブレーキ、急なハンドル操作を避け、アクセルとブレーキを穏やかに操作して、タイヤ摩耗粉の発生を抑えてください。
プラスチックごみを正しく分別し、屋外へ流出させない
ペットボトルや容器包装は中身を使い切り、自治体が定める区分と収集方法を確認したうえで、指定された場所へ出してください。
海岸や公園などで出たごみは持ち帰り、屋外で保管するごみにはふたをして容器を固定すると、風雨による散乱や河川への流出を防げます。
表示や根拠を確認して環境負荷の少ない商品を選ぶ
「環境にやさしい」という文言だけでなく、第三者認証、材質、再生材の使用率、耐久性などの具体的な情報が、商品を選ぶ根拠になります。
「植物由来」は原料、「生分解性」は分解する性質を示す別の表示なので、混同せず、どのような環境や期間で分解するのかまで確認してください。
まとめ|原因・影響・対策の3点から正しく理解しよう
- マイクロプラスチックは、一般に大きさが5mm未満の微細なプラスチックです。
- 発生過程によって一次と二次に分かれ、プラスチックごみ、合成繊維、タイヤなどから生じます。
- 環境中へ流出すると分解・回収が難しく、海洋生物や生態系への影響が懸念されています。
- 食品、水、空気を通じた人体への曝露は確認されていますが、健康被害との因果関係は未確立です。
- 国際条約の交渉、EUの製品規制、日本の流出防止・資源循環など、国内外で対策が進められています。
- 個人でも、使い捨て容器、洗濯、運転、ごみの分別、商品選びを見直すことで発生と流出を抑えられます。
プラスチックを完全に排除するのではなく、どこから発生し、どの行動で減らせるのかを把握したうえで、続けやすい対策から取り入れてください。
人体への影響に関する新しい研究を見る際は、検出の有無だけで判断せず、対象者数、分析方法、曝露量、因果関係の説明まで確認してください。
【参考資料】
- 環境省「一般向けマイクロプラスチック発生抑制・流出抑制対策」
- WHO「Dietary and inhalation exposure to nano- and microplastic particles」
- WHO「Throwing away our health」
- NOAA「What are the impacts of microplastics?」
- UNEP「Intergovernmental Negotiating Committee on Plastic Pollution」
- 欧州委員会「Regulation(EU)2023/2055」
- 環境省「海岸漂着物対策の基本方針」
- 環境省「プラスチック資源循環法」


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